コーヒーが好きなのだけど、授乳中だから自粛している。
今までどおり美味しく飲んでいる夫が恨めしい。
カフェインレスも美味しいっちゃ美味しいけど、やっぱりリアルガチには敵わない。
甘いものを食べて、すぐコーヒーを一口含んで、鼻から息を吐くと、ほら幸せの時間。
安いチョコレートでも、コーヒーと一緒にいただけば高級な味にグレードアップする。
数年前、コーヒーの焙煎体験をした。
アパートの一室が教室になっていて、講師の女性が丁寧にレクチャーしてくれた。
コーヒーの豆はもともと緑色。急須を平べったくしたような焙煎機に火をかける。加熱して初めて、いつも目にするあの焦げ茶色の豆になるのだ。
焙煎が進むと、コーヒーの香りがゆっくりと部屋いっぱいに広がった。まさに大人の習い事。豊かな時間だった。
そのなかで、コーヒーは鮮度が命ということで、市販のものと焙煎直後のものの飲み比べをさせてくれた。
まずは市販のもの。わたしにとってはいつもの味である。
「まあ、うん、普通に美味しいですね」
と感想を伝えたところ
「え?!美味しい?!それ本気で思ってます?!」
とものすごい形相で迫ってきた。
やべミスったと思ったわたしは
「いや、よく味わったら雑味がありますね!!まずい!まずいです!!」
と訂正。
講師は、そうでしょ、焙煎から時間経ってるしかなり味落ちてるはずですよと一安心し、続けて焙煎直後のものを飲ませてくれた。
さすがに鮮度抜群なだけあって、いつも飲んでいる市販のコーヒーより格段に飲みやすかった。
だがこの素直な感動を伝えるよりも、講師の期待する反応をしなければいけないということで頭がいっぱいになり
「ああッッ!!これはッ…!こんなに美味しいだなんてッッッ……!市販のやつと比べものになりませんねッッッ」
と柄にもなく全力でリアクションした。
講師はとても嬉しそうにしてくれて、ホッと胸を撫でおろした。
あれ以来行っていないけれど、大人の習い事でコーヒーの焙煎、アリだな。